デッドライン仕事術 - 吉越 浩一郎

本書は仕事を時間内に終わらせることの本当の意味と、そのための具体的な方法を指南する内容となっています。仕事をだらだらやることなく、早く終わらせることの効用について言われだしてきた昨今ですので、仕事を早く片付けたいと思っている人は多いでしょう。しかし、思っているにも関わらず、なかなかうまくいかない、という人には実際に読んで実践してほしい一冊です。さらには、経営側の人で、社員は長く働かせた方が良いと思っている人にも是非読んでもらいたいですね。


デッドライン仕事術 (祥伝社新書 95)


デッドライン仕事術 (祥伝社新書 95)
吉越 浩一郎 (著)
¥ 777 (税込)


前もって終了条件を決めておく

締め切りを定めることによって、仕事の締め切りがはっきりと分かり、さらに自動的に優先順位も付く(締め切りが速いものを先にやらないといけない)ため、余計なことを考えることなく、締め切りという目標を見て仕事ができるため、効率的に仕事ができるというのは、本書に限らずいろいろな本で指摘されている内容です。

本書の仕事術のポイントはこれを発展させたもので、タイトルの通りまさにあらゆることに「デッドライン」を定めることです。本書の面白くかつ役に立つ部分はこの「デッドライン」が必ずしも時間だけを指すものではないということ。

ただし、そこで社員に思い切ってチャレンジさせるには、「撤退のルール」を明確に決めておくことが必要だ。 - p94

一見すると「やめる」条件を決めておくというのは後ろ向きな考えだし、集中して仕事ができなくなるんじゃないかとも思えるが、まさにここが本書の仕事術のポイントではないかと思う。やめるための条件を考えておくというのは、全然後ろ向きな考えではなく、前もってやめる条件を考えておくことにより、仕事中にやめるかどうかの判断をしないで、ひたすら「やる」ことだけに集中できるということである。

時間管理は経営陣こそ考えるべき問題

昨今、サラリーマンの働きすぎが問題視されているのに、全然減っていない、ということの本質には、結局経営陣が「社員には長い時間働かせた方が得」という考え方があるからではないでしょうか。もちろん社員個々人が「長く働く方が優秀」と思っている部分もあるかとは思いますが、それは結局会社としてそういう雰囲気があるということでしょう。

結局長時間労働を減らすためには経営陣の意識から変えていかなければならないのです。本書はその会社経営者という立場の人間が書いた本であり、実際に内容も社員個々人の努力でできる部分以上に、会社として改善していくべきだという部分が多くなっています。今だに「長時間労働が美徳」だと思っている経営者の人がいたらぜひ読んでいただきたい一冊です。