非属の才能 - 山田 玲司

漫画家山田 玲司が自分の体験をもとに、程度の差こそあれ、誰でも少しは考えたことがあるであろう、自分が人と違うこと、について徹底的に考えた一冊。必ずしも大衆と同じである必要はなく、むしろ大衆に属していない部分こそ才能の表れだ、という主張になっています。ただしく読めれば非常に示唆の富んだ本です。


非属の才能 (光文社新書 328)


非属の才能 (光文社新書 328)
山田 玲司 (著)
¥ 735 (税込)


大衆に属していないことこそ本当の才能

本書の一番の主張では「非属」、つまり大衆が良しとするものに組み入れられないこと、こそ本当の才能の発露であるということです。これは多分に当たっている気がします。確かに普段からいわゆる一般的な所に属している人には、結局その一般にどっぷりつかりすぎているために、一般常識をガラリと変えるような「才能」が出てくることはないということです。

ただ、ここで気をつけなくてはいけないは、確かに大衆に属しない部分から「才能」が出てくるということは正しいのだが、一方で正反対の「どうにもならない」部分もこの「非属」から出てくるという事実。よく社会は2割の出来る人と6割の普通の人と2割のだめな人で構成されるといわれますが、大衆部分がこの6割の部分を占めるのに対し、「非属」の部分は上下の2割ずつを含むということです。それを考えた上で、僕個人としては必ずしもどちらに入るのがいいとは言えないと考えています。

ここでミスリードしてほしくないのは、著者は必ずしも「非属」になれ、と言っているわけではないこと。あくまで、大衆に入れという圧力がとても強く、それをなくしてほしい、ということだけを言っている。確かに日本人はこの同調圧力というものが非常に大きいということは感じている。その部分は社会全体として取り除いていくべき部分だと思う。

全体としては良書

本書は、実際に読んでみると細かくツッコミたい点は多々ある。たとえば、出てくる例が偏りすぎていたり(というか知り合いの漫画家ばっかりじゃないか)、論理的に破たんしている部分(ひきこもれと言っている割には、ネットは見るな、となっているが、引きこもりとネットは分けては考えられない部分だろう)などいろいろとある。

しかし、本書自身は論理ではなく完全に感情で書かれた一冊だ。その点を理解し、細かい部分について考えず、著者の本意のみをしっかり追っていければ、非常にしっかり読めれば基本的にはかなり良い示唆に富んだ本であると思う。