人月の神話―狼人間を撃つ銀の弾はない (3)

人月の神話のラストです。今回は、副題にもなっている「狼人間を撃つ銀の弾はない」というお話と、新装版時に追加された、この20年で実際にどの程度予測が当たっていたかというお話。


人月の神話―狼人間を撃つ銀の弾はない (Professional computing series (別巻3))

人月の神話―狼人間を撃つ銀の弾はない (Professional computing series (別巻3))
Jr.,フレデリック・P. ブルックス (著)
滝沢 徹 (翻訳)
富沢 昇 (翻訳)
牧野 祐子 (翻訳)
¥ 3,045 (税込)


銀の弾などない

要旨を一言で言ってしまうと、「ソフトウェア開発の生産性を急上昇させるような技術はない」ということです。実際には(本書出版から)10年以内には、と言っていますが、現在でもこれはある程度正しいような気がします。

本章では、その難しさの原因を2つに分類し、本質的なものと偶有的なものに分けています。偶有的なものとはプログラムする上で犯す間違えや、書きにくいプログラミング言語、悪い開発環境などで、本質的なものとは概念構造をプログラムという形で表現する際の難しさのことです。

本書の読み継がれている部分は、こういう「予言」を行い、さらにこれらを解決可能かもしれない方策を提案していることでしょう。

20年後の見解

本書の改訂版の面白いところは、この著者による「20年後の見解」が多く載っていることです。最後の17章以降はまさにそういう内容。

本書はその内容から、かなりの議論を呼んだようです。今ならそれに対してブログなんかでコメントというのはよくあることですが、当時としては本にその内容と著者の見解を載せるというのは非常に新しいことだったのではないでしょうか。もともと、「未来を予言する」ような内容の本のため、それを実際にあとで見返してみるということも面白いです。

確かに、著者自身、いくつか自分の見解の間違いを認め、それについての修正をここで行っていますが、多くの内容は、確かに言うとおりだったという内容。この、「あとから見直す」という行為が、本書の価値を一層上げている要因でしょう。

まとめ

本書は約30年も前に書かれた本であり、日本語訳ですら古いため、かなりの読みにくさを感じます。しかしそれを考えても、今なお読み継がれているのは、やはり本書には本質的なものを指摘しているからでしょう。

ソフトウェア開発を職業としてやっていこうという人にとっては必読の一冊。