[書評」「朝30分」を続けなさい! - 古市幸雄

「１日30分続けなさい」の著者の2作目です。正直、生活習慣を変えていくための本としては0点という感じの本。ただし、自己啓発としては、ある1文に感動した。そのためだけに買う価値のある本。

「朝30分」を続けなさい!人生勝利へのスピード倍増!朝勉強のススメ
古市幸雄 (著)
￥ 1,365 （税込）

対象は本気で勉強をしたい人？

この本では、かなり強い口調で「勉強をしないといかにダメか」を切々と説いています。全体の語り口調で、前著に対して相当いやなことを言われたんだろうな、ということが容易に想像できてしまいます(笑)。ただ、全体を通してその「勉強をしないとダメで、勉強をする奴が成功できる」ということを、ただひたすら書いてあるだけとなっています。

まず冒頭で、「本気で勉強したいやつ以外読むな！」というようなことが書いてあります。なので、この本の対象読者はそもそも「勉強を本気でやりたいやつ」なんだと思います。その人たちに勉強の素晴らしさを説くというのは、釈迦に説法状態で、何ともお間抜けな感じです。

またこの本では、勉強に近道はなく、地道な努力が必要だ、ということが書いてあります。実際それは正しく、多くの人はすでに知っていることでしょう。この本を取った人が一番知りたかったのは、近道をする方法ではなく「遠回りをしない方法」ではないでしょうか？この本の中でイチローの例がよく出てくるのでそれで話すと、イチローは毎日素振りをしていたからあれだけうまくなったんだ、と書いてありますが、読者だってそんなことは知っていて、本当に知りたいのは「凄い野球選手になりたい人が、間違ってリフティングの練習をしないようにする方法」ではないでしょうか。

生活習慣改善本としては最悪

生活習慣を改善する本としては、最近だと「勝間本」当たりが非常に人気です。内容的にもこの本もその手の本と同じジャンルになります。ただし、この本を勝間本のような同じジャンルの本と単純に比べてしまうと、正直内容的にはかなりひどい本になってしまいます。

一番の問題点は、内容が具体的でないこと。自己啓発本の割に、具体的な改善方法が全く載っていません。たとえば、勝間本にしろ、レバレッジにしろ、かなり具体的な「商品」まで出てきます。それに対して、この本では結局その手のものが何も出てきません。

勉強への啓発

とはいっても、この本にも十分価値はあります。この本の唯一にして最大の価値が以下の文。

「この本に書いてあるこんなこと、すでに知っている」とするだけで、習得しようとしないのです。無意識（潜在意識）に落とし込もうとしていないのです。だから、習慣が変わらないのです。習慣が変わらないから、行動が変わらないのです。行動が変わらないから、結果が変わらないのです。人生が変わらないのです。 - p179

この本の読者が、なぜ著者のように成功できていないのか、といったら、一番にして唯一の違いはこの「実行できるか」というところだけではないでしょうか。結局、自分の結果が変わっていないと嘆いている人は、自分の行動を変えていないのです。その点に気づけるだけでも本書の価値があります。

個人的には、自分の感情を抑えて冷静に書いてくれれば、かなり良い本になったのではないかと思います。